記事: Designer's Story
Designer's Story
30歳、
未来への自分を救たくて、
リーディンググラスのブランドを立ち上げた話。
◇
その時の私は、歳をとるのが怖かった。
夢を叶えられないまま、時間だけがすぎていくのが怖かった。
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23歳、駆け出しのグラフィックデザイナーとして、必死に貯めた100万円を握り締めて渡ったニューヨーク。
ニューヨークで出会った女性達は、エネルギーに満ち溢れ、カッコよく、美しかった。
彼女達はいつも本を読んでいた。
地下鉄で、公園で、玄関前の階段で、
Sex and the Cityのキャリーのように、ベットの中で一日の終わりに。
そして彼女達は会話の節々に、お気に入りの一文を引用した。
それはとても、とても美しかった。
彼女達は、私が小さな島国で気づき上げていた、短絡的な美への概念をいとも簡単に打ち壊した。
◇
27歳、私は夢破れる形で日本へ帰国した。念願かなって手にしたアーティストビザを大使館で突然却下され、アストリアのアパートの荷物もそのままに帰国したのだ。
その後、日本で再開したグラフィックデザイナーの仕事は、ニューヨーク時代の苦労が嘘だったみたいに順調だった。
フリーのデザイナーになり、自由に沢山働いた。
でも心の中は、このまま、夢を叶えられないまま、
あいまいにしたまま、時間はあっという間にすぎて行くに焦りを感じ、
気づいたら、また歳をとるのがまた怖くなっていった。
◇
30歳直前、
そんな自分を救いたくて、前に進むための挑戦をして、小さなブランドを立ち上げた。
BOOKART「本を読む人は美しい」がテーマのリーディンググラスブランド。
歳を重ねることが、楽しみなブランドを作りたくて選んだテーマだった。
◇
あの時憧れたニューヨークの女性達のような人生が歩めるように。
そしていつかこのブランドがまたニューヨークへ導いてくれるように希望を込めて、小さく小さく、BOOKARTがスタートした。
写真は一番人気モデル Cry Cityのファーストスケッチ